あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

こういうのは、初めてのことじゃなかった。

あの人の名前を聞かれたっていうのは、初めて……ではないのかもしれないけど。

こんな風に名前を出されて、問い詰められたのは初めてのことだった。

とにかく、大抵いつも、終わりはこんな感じ。


優しい人、強引な人、チャラ男にイケメン、バンドマンに真面目くん。

先輩、後輩、同級生に、バイト先の人。


私はどんな人と付き合っても、長くは続かない。


その原因は、いつも、コレ。

浮気してる。
他に、男が、好きな人がいる。

彼らはみんな、そう言って、私から離れていった。

その疑いは、正解じゃないけれど、全く違うとも言えない。



私には、おおっぴらに、好き、と言えない人がいる。


その人の顔を、声を、交わした言葉や、過ごした時間のことを思い出すだけで、胸が痛くなるような人が。


誰と付き合ってみても、あの人がチラついて。

これがあの人だったら……そう思って、せつない気持ちになる。



………そんな人が。


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