あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

「一緒でしょーが!大体ね、そうやって元カノと同じとか違うとかって比べてくるの、本当、めんどくさいと思ってたから!」
『めんど…っ』
「服とかアクセとか髪型とか髪色とか……いちいち口出ししないで!そんなの、私の勝手でしょ!」
『それは、女の子っぽい方が』
「そういう恰好してる元カノに浮気されたんじゃないの?」
『うっ……』
「大体、あんた全然センスないから。むしろ、ダサいから」
『……ええっ?!』

本当のことなのに、むちゃくちゃ驚いてて、逆にびっくりした。

気づいてなかったんだ、笑える。

「今日の服とかも、一緒に歩くの恥ずかしいレベル。あ~やっと言えてスッキリしたぁ~」
『な……な……』
「じゃあ、バイバイ!」
『紗良!』
「あ、そうそう。私の写真とか動画とか、そういうの、全部消しておいてよね」
『待っ』
「後から何回も見返されたりするの、私、気持ち悪くて本当に無理だから」

なんか言ってたような気もするし、追いかけてくるような足音もしたけど。

私は速足で駅の改札を通り、ちょうど停車していた電車に乗り込んで難なく危険を逃れた。

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