あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう
「ああ……」
用意された、ネイビーのワンピースを着て出てきた私を見て、あの人は一瞬、手を止めて私を見つめ、まぶしいものでも見るように目を眇めた。
「良かった……サイズはちょうどいいみたいだね」
まさか、女性用の服を用意されるとは思っていなかったから、私は動揺を隠せないまま、ひざ下丈のスカートをつまんだりしながら考えた。
伯母が亡くなってから、もう何年も経つ。
この人は独身で、そしてまだ30代の健康な男性なわけだから……
そこまで考えて、私は愕然と目を見開いた。
まさか…………女?!
私が誰にも言えず、回り道をしている間に、誰か、他の女がここに入り込んでいたの?!
うわあああ!と叫びたい衝動をこらえて顔を上げると、やわらかく微笑むあの人と目が合った。
「久しぶりだね、紗良ちゃん」
「……はい」
「すっかりお姉さんになっちゃって……本当にびっくりしたよ」