あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

「本当にごめんね……何か、着替えを探して来るから、シャワー、浴びておいで」

言われて、緊張に体が固まる。

そういう経験が、ないわけでもないのに……というか、多分、そういうつもりで言っているんじゃないのに。

初めての時と同じ……ううん、それ以上にドキドキと鼓動がうるさくなる。

「お風呂の場所、覚えてるかな?そこ、廊下の途中、右側のドアだから」
「あ……はい」
「水だから、服は乾かすだけでいいかな」
「そう、ですね……」
「洗濯機の上にハンガーあるから。使ってね」

この夏の日差しで、夏物の服はすぐに乾くだろう。

幸いにも、ちょっと湿っただけの下着はそのままで。

言われたとおりに置いてあったハンガーに服をかけると、脱衣所のドアの外で、あの人の声がした。

「紗良ちゃん?着替え、ここに置いておくから」

返事をすると、すぐに去っていく足音。

それが、聞こえなくなったことを確認して。

ドアを開き、置いてあったカゴを引き寄せると、中には意外な物が入っていた。
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