そして僕はまた、君に出会える時を待つ
時間がないって、どういうことだろう?
そう思ったけれど、ぽつんと落とされた言葉のあまりにも切ない響きに、僕は口をはさむことができなかった。
「だから……その、彼が悪いとか、そういう話じゃないの……わかるでしょ?」
「うーん……」
マスターのキュッと上がっていた口角が微妙な感じに歪み、小さなため息を吐き出す。
「俺は……それもどうかと思うけどね」
その話題はそこで立ち消えになり、コーヒーを飲み終わった加奈子さんは短い挨拶を僕にくれて、席を立った。
「またね」
「うん、ごちそうさま」
慣れた感じの挨拶をマスターと交わして。
出ていく加奈子さんが、開いたドアが閉まる音。
コツ、コツ、と彼女のハイヒールが、石畳の上を遠ざかっていく。
その音を耳にした瞬間に、僕は立ち上がり、店の外に飛び出していた。
「……っ、あのっ!」
びっくりしたように振り返る加奈子さんに、勢いのままに歩み寄る。
「試してみませんか?」