男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 どうして髪や目の色が違うだけで……と、そんな女々しい想いが脳裏を掠めてしまう。けれど、こんなんじゃ駄目だ。『俺』は強くなると決めたんだから。

 幼い頃に両親を失って、それでもノエルに励まされながらこうして生きてきた。泣かないと決めていたし、俯いてなんかやらない。そのために、強くなる努力を続けてきたのだ。今じゃ喧嘩も得意なもので、剣の腕もそれなりにあると自負している。

『大丈夫か、ラビ?』

 普段のぶっきらぼうな口調とは違い、穏やかな声でノエルが問い掛けてきた。無意識に強張って拳を作った腕に頭を寄せてきたかと思うと、長い毛並みをした優雅な尻尾で、背中を抱くように包みこむ。

 ラビはそこでようやく、自分が少しほど硬直していたと気付いて、身体の強張りを解いた。帽子のつばの下で彼と視線を合わせ、小さな声で「大丈夫だよ」とどうにか笑って答えてみせた。

 馬車から降りたセドリットとユリシスが、王宮警察部隊と共に、城の警備を担当している衛兵と話していた。そんな中、二台目の騎士団の馬車でお供し、上司達の分の荷物の仕分けの手配を終えた四人の部下達が、早々にこちらへと戻ってきた。
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