男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 ラビは、先日に聞いた『高価な宝石』と『装飾品』のキーワードを思い出して、それを推測したノエルへと目を向けた。彼が視線を返してきて、当たりだ、というようにニヤリとしてくる。

 トーリが宙の上で器用にも寝転がって、頬杖をついてこう続けた。

『そう、首飾りの形をした術具だ。当時トップクラスの『使い手』の一人であると言われていた――つまり大妖獣師だが、この神殿の主でもあった。それを扱える弟子がいなくて、他界する直前に、次の後継者が現われるまではと封印したんだ。問題だったのが、使える人間がちっとも出てこなかったせいで、この神殿から撤退する際に運び出せなかった事だな』

 長い年月が過ぎてから予想外な事になってさ、と彼は片手を振って言う。

『事情も知らず手を出す輩が現われて、ラティーシャ様が術具本体に掛けていた、非常時の術が発動したんだ。次から次へと荒らす連中も来るようになって、そのたびに重ね掛けされていた魔術が運悪く外れて、どれも現在まで効果持続中だ』
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