『ペットフード』
「私、私ね、雨哥の事が好きなの。雨哥が好きだから、雨哥と同じが良くて」
“同じように” が伝わらない。苺美の “同じように” が雨哥の中に存在しないから。
同じが嫌だから。だから許せないのに。
アンタと同じなんて絶対に嫌。許す訳ないじゃん。
「同じなんて無理だよ」
「雨哥の好きな人に同じようにして欲しいの」
「何?それ…意味分かんない。どう言う事なの?」
ちゃんと説明しないと…。
「雨哥の好きな人に、その人に雨哥と同じようにして欲しいの!雨哥と同じになりたいの。だから、その人の事…琉羽君の事が好きとかじゃなくて雨哥と同じになりたいから、だから相手は雨哥の好きな人になっちゃうの。雨哥と同じ…雨哥の次、代わりで良いから、私も」
同じ?私とアンタが同じ?何言ってるの?
絶対に嫌に決まってるじゃん。
「雨哥」と苺美が呼ぶ。
やめて、呼ばないで!
「何なの?それ?何で私なの?何なの?意味が分かんないよ」
頭の中で何かが巡る。
「何?」が回って行く。
「何で私なの?」と小声で聞いた。
雨哥のその声に苺美の記憶が動く。
雨哥の知らない苺美の深心(きおく)。
「何で私なの?いつから?」
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