『ペットフード』
4:48
ゴミ袋を片手に玄関のドアを開け、鉄板の階段を下りて行く。
鉄板の音が小さく鳴る。
少し好きな高い音。

1階に下り、通りへ出る手前でそれが光った。
気付いた。思い出した。
「あっ…」と足下に落ちている “其れ”を拾う。
約2時間半に見た、荷物の中から落ちた物。
男の人が小さな荷物から落とした物。
ビーズとパワーストーンで作られたブレスレットだった。
「どうしよう…」
【101号室】からはまだ物音が立ち、作業をしているようだ。
犬の声は止んでいた。
「後でいっか…」
作業を邪魔される嫌さがどれだけなのか雨哥は知っている。
拾ったブレスレットをポケットに入れ、とりあえずゴミ捨てを終わらせ、部屋に戻った。
【101号室】から響いて来る作業音を聞きながら、歌もビーズ作業へと入る。
いつもより大きく聞こえた気がしたが、雨哥は特に気にしない。
そんな音、アイツに比べれば何の支障もない。
それくらいアイツは…。
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