『ペットフード』

「通報されない事だってあるだろ」
「心中とか殺めた後、自分も…って事もあるだろ」
「交通事故、死亡事故、火事、いろいろあるだろ」
「いくらだってあるんだ。すぐ起きる。起こす。起こされる」
「今のアンタみたいなケースもある。あの警官が先に見付け、気付かれる前に持って来る。役所の人間の中に “ペットフード” を求め待ってる奴がいたとしたら?求めていて、どこかにそんな事が起こってないかと目を光らせてる奴だって。早く見付けて “発注” するんだよ。それが出来た時、ウチに来る。そう言う風になってるんだ。この町は。ここは…」
簡単に受け入れられてしまう自分の考えに、雨哥は飲まれた。
だって、自分もその中の1人だから…。
“ペットフード” は求めてはいないけれど…。
受け入れるのが “普通” なのだ。
ただそれだけで全て片付くのだから。
いろんな事を一気に聞いた。
大変な事が起きているはずなのに、頷きながら、納得しながら手を動かし聞く。
「他には?」と冷静に聞かれる。
他に…他に…。
「今は特に…。こんな事が起きてるなんて…何を聞いて良いかも分からなくて…」
素直な雨哥にタキの方が困りそうになる。
なぜこの子はこんなにも冷静で素直で、そして普通を保っていられるのだろう…。
それは、タキはもちろん、雨哥にも分からない。
ただ、普通にその時間を越えて行く。
これからの為の今…。
雨哥は “今” を受け止めた。
越えただけ。