『ペットフード』
「タキさん、もう大丈夫だと思う。外してあげて」
琉羽に言われ、「そうだな」とタキも納得し、雨哥を見る。
「大丈夫だよな?」と優しく聞かれ、雨哥はしっかりとタキを見た。
いつもの雨哥の目で。
右手の手錠が外された。
雨哥の右手首は擦り傷が付き、少なからず出血もしている。
でも、痛みはそれほど感じない。
傷よりも熱の方が辛く感じられたから。
「おいで」と琉羽に呼ばれ、雨哥はその体に飛び込んだ。
琉羽の熱、感触、香り、心音。
全てが琉羽で全てで雨哥を受け止める。
それは琉羽も同じで、全てで雨哥を感じる。
お互いのお互いを受け止め感じ合う。
愛おしい大好きな2人の全て。
2人の姿を見守りながら、タキは整えて行く。
全てが揃った。
最後の刻。秒。
赤の証明へと…全ての終へと…そして…。
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