(更新停止)時の狭間
 

「そういえば、まだ話していなかったわ。」


彼女は思い出した様に立ち上がり、私へと手を差し出した。
誘われるように握ったそれは相変わらず冷たく、体温が吸い取られるように感じられる。

白く長い指はしっかりと私の手を握りしめ、まるで憎しみを持っているような。
そんな気さえ起こさせた。
けれど、シオンさんの口元は弧を描いていて。

その笑顔は、満面の笑みには到底思えないけれど、この時の狭間でなによりも安心するものだった。

そんな物にさえ安心感を覚えるほどに、ここには何も無い。


「くゆるちゃん、少し出かけましょうか。」


くいっと手を引かれるまま、私は彼女を追いかける。


「出かける、って?」


まさか、生きていた頃のあの場所に行けるのだろうか。
期待の混ざった問いだった。
しかし彼女は静かに首を振って、あまり期待はしないで、と短く答えた。

それから会話はあまりなく、ただ黙々と歩くだけ。

白いだけの、この空間。
どれだけ歩いても進んで行く実感はなかった。


 
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