(更新停止)時の狭間
「くゆるちゃんは覚えている方よ」
「え?」
それは、どこか冷めたような声だった。
見下すシオンさんは私を見ていて、私を見ていない。
どこか遠くを、見つめていた。
「アタシは、ここで目が覚めたとき何も覚えていなかったもの」
「それって、シオンさんも死んでるってこと……?」
私の問いに、やはり愉快そうに彼女は笑った。
さっきの表情がまるで嘘のようだ。
「そうよ」
私の目線に合わせるようにしゃがみ込んだ彼女は、首の腫れをするりと撫でた。
「ここは死んだ者が最初にたどり着く場所、時の狭間。ここに来たばかりの時は、皆ほとんど記憶を持って居ないわ」
細く冷たい指が腫れに触れる度、ぴりぴりと痛みが走る。
「ここから抜け出す方法はただ一つ」
凛とした声。
嘲笑うような笑みが、私に向けられた。
「自分がどうして、どのようにして死んだのか思い出すこと。ただそれだけよ」
立ち上がり、再び私を見下ろした彼女。
シオンさんは私へ向けて白い手をさし出した。
「時の狭間へようこそ。くゆるちゃん」
愉快そうな笑みを浮かべる彼女の手を、私はゆっくりと握ったのだった。