優しい風
待っていたら、
こっちへ走ってくる高橋が見えた。

「ごめん、遅れちゃった。」

「大丈夫だよ。
女の子は準備とか
色々大変だもんな。
今から楽しもう。」

「うん。
…そのマスク、どうしたの?」

彼女はやはり訊いて来た。

「風邪予防に着けていけってさ。」

「そっかぁ。」

彼女は特に気にする風でもなく、
「行こう」と手を引っ張った。

「あ、待って。
…もう少し、
ゆっくり歩いて欲しいんだ。」

「どうして?」

「それは…。」

「言えないこと?」

「ごめん…。」

「解った。
いいよ。ゆっくり歩こう。」

物分りの良い人で
よかった、と思った。
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