優しい風
すると杏は空を見上げて
淋しそうにこう言った。

「…このまま、時間が
止まっちゃえば良いのに。」

「杏…?」

「なんてね。気にしないで。
あ、そうだ。
ちょっと目閉じて。」

「あぁ…。」

言われたとおり目を閉じると、
唇に柔らかいものが触れた。

キスされたらしい。

慌てて目を開けたら、杏は
「ふふっ、いつか唇にして
あげたかったんだー。」
と笑いながら言った。

「まったく…。」

俺は呆れながらも一緒に笑った。
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