忘れさせ屋のドロップス

「華菜、ずっと側に居てくれて、ありがとう」

くしゃくしゃとあたしの髪を掻き乱すように
遥の大きな掌が撫でる。


あたしは、遥の唇にキスを落とした。最後のキスだから、遥は何も言わなかった。


ーーーーカロン……と遥の唇からドロップスの音がする。

「華菜?」

「やっぱり返す。それなくても、遥のことなんて、すぐ忘れちゃうから」


笑ったあたしに、遥がドロップスを転がしながら、少しほっとしたような顔をする。


嘘だよ。ずっと忘れない。貴方に恋した時間はあたしの宝物だから。


ーーーーねぇ、遥は覚えてる?


初めてキスした時、遥からはドロップスの甘い味がした。あたしは、遥との最後のキスも甘いままが良かったの。

……大好きだったよ。遥。
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