忘れさせ屋のドロップス
「泣いて何になんの?水分でるだけだろ」

「……ほっ、ほっといて」

「昨日も泣いてた」

「え?」

「寝ながら泣いてたって言ってんの」

飲み干したミネラルウォーターのペットボトルをを捻ってゴミ箱にぽいと入れた。

遥は、夜中?……早朝?には帰ってきてたのだろうか?

「寝ながらさー。メソメソ泣いてる女の横で寝れるかよ、お陰で俺はあのソファーで寝たんだからな」

遥が、首を左右に倒しながら右手で首の後ろを摩った。

「……今日から、私がソファーで寝るから。……ごめんなさい」

「別にそーゆーこと言ってんじゃねぇよ。オマエさ、何で思ってること言わねーの?」

「え?」

「すぐ泣くけどさ、何?可哀想って慰めてほしい訳?」

遥の顔をみた。遥が私に向けているのは嫌悪感だった。

「違っ、そんなんじゃない」

「お前聞いたよな?昨日、俺に心が読めるのかって。そんな奴いねーよ。ただ、オマエの顔に書いてあんの。卑怯だろ、言えよ、自分の口で。言わなきゃオマエの気持ちどころか、誰もオマエのこと細胞一つだってわかんねーわ」

「何、それ。此処に住まわせて貰うからって、私は遥に何でも言わなきゃいけないの?
言ったって……遥に、私の気持ちなんてわかるわけないじゃん」

 めんどくせー。遥が呟くのが聞こえる。

 言いながらまた涙が溢れた。泣きたい訳じゃない。もう泣きたくないのに。その為に逃げ出してきたのに。 

「じゃあわかってもらいたい顔すんな!迷惑なんだよっ」

「そんなこと、そんな顔してない!」

 言い返した私に、明らかに苛ついた遥が眉間に皺を寄せた。

「じゃあ俺の前で泣くなよ!顔に出すな!俺の前で二度と泣くな!」

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