冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
私の言葉に藍が明るく答える。

『何言ってんの、うちは明日海に手伝ってもらえて助かってるよ』

電話を切り、未来に離乳食とミルクを用意した。授乳は一歳で卒業し、もうほとんどの栄養は食事からとれる未来だけど、ミルクは味が好きのようでいつも欲しがる。

野菜のあんかけをのせた軟飯とミルクを平らげると、未来は眠そうにプレイマットでごろごろし始めた。手でぶらさがったぬいぐるみを引っ張っているのでまだ遊ぶつもりらしい。放っておくと眠ってしまいそうだ。寝ぐずりはあまりしない方で、それだけは本当に助かっている。

私は未来の離乳食に入れたツナの残りをロールパンに挟んで、インスタントスープと一緒に簡単な昼ご飯にした。食べながらメールをチェックする。
藍からの依頼は、いつものもの。タウン誌の記事だ。私は記事の編集を手伝っている。
寺田藍はこの家から車で三十分ほどに住み、家業の印刷会社を継いでいる。
家族経営の小さな会社で、社史や同人誌の印刷がメインだそうだ。
その傍ら、藍はこの街のタウン誌を作っている。藍が編集長となって、地元の仲間が編集員。書いた記事の校正作業やレイアウトを、私を含めた数人が担当している。
皆、本業があり半分ボランティアのようなタウン誌作成だけれど、子育て中で働き方も収入の得方も制限がある私にはありがたい仕事だ。
さらに藍は印刷所の仕事も、原稿確認や著者との連絡など一部を私に回してくれている。

これは今日の午後、未来のお昼寝時間にやってしまおう。そんなことを考えて、食事を終えると、未来はプレイマットでくうくう寝息をたてていた。
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