冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
家庭内別居という言葉が浮かんだ。
この状況はまさにそれ。豊さんは私と未来に関わる気はないらしい。
時折、メモと一緒に現金が置かれてあるけれど、お金以外で繋がりを持つ気はないようだ。

彼がそう望むならそれでいいと思う。
彼にとっては、愛のない妻とその連れ子。あくまで形ばかりの存在。

だけど、それならこんな部屋を用意しなくてもよかったのに。心苦しいのは、せっかく彼が購入したこのマンションを私と未来が占領し、彼の居場所がないことだった。

せめて、週末くらいはひとりでゆっくりしてほしい。週末は私と未来が実家に行けばいいのだ。引っ越してきて以来、両親にも藍にも会えていない。
しかし、そうした話をする機会もないのだった。



その日、私は深夜にうとうととしていた。ほんの少し前まで未来が夜泣きをしていて、ようやく眠ってくれたところだった。

未来は元気いっぱいだけれど、引っ越しで環境が変わったせいか、以前より頻繁に夜泣きをする。
ほぼ卒乳状態なので、授乳でごまかすことができない。そうなると、泣きじゃくり暴れる未来を抱いて何時間もゆらゆらと揺すり続けなければならないのだ。

疲れ果て、眠りに落ちそうなタイミングで玄関のドアが開く音が聞こえた。豊さんだ。
どうしようかと考えて、私は身体を起こした。
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