不倫の女
抱きしめ頭をなでられたときに、感じたそこはかとない懐かしさ。
その理由。
信じられないようなことが起きていることだけは理解できた。
「もう理解したようね。そういうこと。これは私怨による復讐なの。あなた自身に罪はないのだけれど。どうしてもあなたを使って、あの女に復讐しないと気が済まなかったの」
私自身に罪はない?
じゃあ、罪があるのは誰?
あの女とは一体?
「なんで……? なんでそんなことするんですか」
「わからないの? あなたも同じだからわかるでしょう」
「わかりません」
「――女だからよ」
その一言に、なるほどと理解できる自分に恐ろしくなる。
奥様はカバンの中に手を入れる。
中からナイフでも取り出して、私は刺されるのでは、と怖くなる。
だが、そんなことにならないのはわかっている。
数十年に及ぶ復讐がただの殺人で終わるわけがないからだ。
理解が少しずつ追いついてくる。
「これ、渡しておくわね」
カバンから取り出した封筒を渡された。
女は満面の笑みを浮かべ去っていった。
その背中は歓喜に震えているかのようであった。