不倫の女
どこからどこまでが噓だったのだろう。
裕太さんが私に言ってくれた言葉や感情は本当にあったのだろうか。
そもそも裕太さんという人物は実在しているのだろうか。
あの女は裕太さんと本当に結婚していたのだろうか。
わからない。
わかりたくもない。
わからないままでいた方が多分いい。
そう直感が告げている。
この葬儀は、本当にあったことなのだろうか。
彼女はこの場所が、自身の会社の系列と言っていた気がする。
葬儀自体を取り繕うこともできたのではないか。
故人と遺族の都合でご尊顔を見られないようにしていたのも、もしかしたら噓なのではないか。
そこで私はようやく理解する。
どこからどこまで噓ではなく――
何から何まで噓なのだ——
彼の遺影のようなものの下にある棺に私は近づいた。
この棺の中に彼はいないのかもしれない。
何から何まで噓だったとしても、私が彼に抱いた感情は本物だった。
この棺の中にある真実を覗いてしまったら、私があのとき彼に抱いた感情は脆く
崩れ去る。
それでは、あまりにも自分が可哀想だ。
一方で真実を暴いてしまえば、私の気持ちは解消されるかもしれないという淡い期待も生まれてもいた。
私は棺に手をかける。
恐る恐る蓋の鍵を開ける。
目を閉じて蓋をゆっくり開く。
蓋を開ききる。