不倫の女

 その瞬間私のスマホが鳴った。

 棺の中を見ることからは目を逸らした。

 問題の先送りをするためだ。
 
 着信音から電話だとわかる。

 スマホを見る。

 調査対象A、とスマホに表示されている。

 これは私のスマホだったはずなのに、表示が勝手にいじられている。

 そんなことではもう驚かない。

 ああ、そうだろう。と納得することができた。

 電話に応答する。

「もしもし、凛? お母さんだけど。ちょっと聞いてほしいことがあって、電話しちゃった。お母さんね。あの結婚することにしたのよ」

「へえ、そうなんだ。いつ?」努めて平静を装う。

「近いうちに。三ヶ月後ぐらいかな」

「いくつの人なの?」

「笑わないでね。結構年下で四十七歳の人なのよ」

 加藤裕太、と名乗っていた人と同じ年齢だ。母より十歳も若い。

「若いね。いい人が見つかってよかったね。名前はなんていうの?」

 聞いても仕方ないのに、聞かずにはいられない。

 電話の向こう側で、インターホンが鳴る。

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