君を手に取る1秒前
狂い始め
健人はあの後、運転手の男性が救急車を呼
び、病気に救急搬送された。
ベッドに健人が横たわっている。
手術は成功したそうだ。
でも、健人は目を覚まさない。
健人を手術したと思われる医者が、口を開いた。
「手術は無事成功しました。ですが、意識が戻るかは分かりません。」
隣にいた健人の母親が泣き崩れる。
ああ、全部”もう1人の私”が……いや、悪いのは全部私だ。


ん……ここは?
見えるのは、真っ白な天井。
あ、そうか……俺、車に轢かれて……。
体を起こそうとするが、力が入らない。
「健人?健人!?」
目の前には涙を流している母の姿。
そして、呆然と立っている女の姿。
……誰だ?
すると、病室に入って来た医者らしき人物が喋り始めた。
どうやら、俺の意識が戻ったのは奇跡らしい。
「健人。紗奈ちゃんも、事故から毎日来てくれてるのよ?」
紗奈ちゃん?
「誰だ?それ……」
そういうと、女はヒュっと息をのむ。
「あんた、何言ってるの?紗奈ちゃんよ?」
すると再び医者が喋り始めた。
「意識障害が見られます。思いが強すぎて、彼女の記憶だけがかけてしまったのでしょう」
その医者の言葉を聞くなり、その女は病室を飛び出して行った。
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