*結ばれない手* ―夏―
「団長(いわ)く、どうも筋肉の組織からもう常人とは違うらしい。だからその辺の筋肉あんのか分かんねぇギャルみたいな手足しながら、あれだけの舞を魅せるんだ。モモはやっぱり天才だよっ」

 ──いや……それって、天才というより異星人か異次元人なのでは……?

 秀成は驚きよりも恐怖を感じながら、モモの影を目で追った。

 さすが国家機密レベルのスパイ養成候補に選ばれる筈だ、とも。(Part.1:春編『夜桜の約束』をご参照ください)

「秀成、駐車違反になっちまうから、車内で待機していてくれ!」

 何とか引き離されずに駅のロータリーに車を寄せ、暮は凪徒の居場所を示したままのスマホを受け取り、モモの後を走った。

 改札の前で戸惑う少女に後ろから怒鳴り声をあげる。

「モモ! 払っとくから飛び越えていけ!! 凪徒は向こう側のホーム最後尾だっ!」

「……は、はいっ!」

 モモは頭が理解出来ない内に既に飛び越していた。

 真っ直ぐ進んだホームの右側に、向かい側へ渡る為の階段を見つけて、三段跳びで登り詰める。

 ──先輩……行っちゃ……嫌だ……。お願い……だから──!!

「先輩っっ!!」

 同じく三段抜きで下った階段下から、ずっと先に立つ、一つ頭の飛び出した凪徒の横顔に叫んだ。

 途端向けられた驚きの(おもて)──先輩──。


< 113 / 178 >

この作品をシェア

pagetop