*結ばれない手* ―夏―
 残された暮に、依然疑問だらけの秀成は、

「暮さん、事情を説明してもらえませんか? 事と場合によっては、僕、結構役に立てると思いますよ?」

「え? あ、そうだな──」

 ──確かに。こいつのスマホがあれば、凪徒の居場所は把握出来ている訳だし──。

 暮は秀成を伴い再び車を発進させた。

 遅い昼食を兼ねて近所のファミレスへ向かう。

 団長の口から出た衝撃の事実を順に話している内に料理がやって来て、二人はそれでも話をやめずに食事に手を出した、が──。

「「えっ!? あぁ? え──っっ!!」」

 ほおばったご飯粒が二人の口から勢い良く飛び出し、お互いの頬にくっついた。

「モ、モモが……凪徒さんの妹!?」

「あの発信器が、盗聴器!?」

 同時に叫んだ後に数秒言葉を失った。

 周りからのどよめきと沈黙が二人の飛んでいった意識を呼び戻したが、呆然としながら張り付いた粒を取り去るのがやっとだった。

「お、お前っ、何聞こうとしてたんだよっっ」

「あー……えっと、ただの実験のつもりだっただけなんですが……。ちなみに初め感度を調整するために聴いてみただけで、あとはボリュームをゼロにしたままです」

 ──やっぱり怖いぃ、こいつ……。

 が、脳天にふと思いついたグッドアイディアで、暮はニヤリと笑い秀成の耳に口を寄せた。


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