*結ばれない手* ―夏―

[41]披露宴と墓参り

 それから全員が立ち上がり、去る者と見送る者の様々な挨拶がテーブルの上を飛び交った。

「しかし、私の演技もなかなかのものだっただろう? 自分の口から「()(しろ)」という言葉が出てきた時には、我ながら(おのの)いたがね」

 隼人は後頭部を掻きながら自画自賛して笑ったが、

「まったく……本当に悪魔に()りつかれたかと思ったぜ」

 ──同感……。

 呆れてぼやく凪徒の背後で、暮と秀成も口元をヒクヒクと歪ませた。

「モモちゃん、私、貴女を諦めた訳じゃないわよ。気が変わったらいつでもいらっしゃい。一ヶ月で社交界デビューさせてあげるから」

「あ、ありがとうございます……」

 杏奈はモモに近付き、宣戦布告にたじろぐモモを強く抱き締めた。

 途端ゲンナリとする凪徒と、目の前の光景に絶句する暮と秀成。

 ──そうだ……このお姉さんの『両刀使い』疑惑はまだ晴れていなかった……。


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