*結ばれない手* ―夏―

[12]トラブルとアクシデント

「……どういうことだ……」

 ──え……?

 公演を終えた薄暗い舞台裏に、ドスの利いた低い声が響いた。

 周りで片付けをしているスタッフもつい足を止めてしまう。

 全員の視線が凪徒の仏頂面に集中した。

「どういうことだって言ってるんだよっ」

 通常凪徒の説教は、誰もいない会議用のプレハブで行なわれる。

 であるから、こんな大勢の前で怒鳴る凪徒を余り見たことのない面々は「これがあの噂の……?」と半分興味もあり、またその怖ろしいオーラに圧倒されて動けなくなっていた。

「あの……でも──」

「何だよ、反論出来る立場か」

 モモは降り注がれる威圧的な言葉と、周囲の視線に耐えながらも、自分の意見を凪徒に伝えようとした。

 ──あれは自分じゃない……あたしのタイミングは間違っていなかった。あれは先輩が……──。

「おい……やめろ、凪徒」

「うっせぇ! 外野は黙ってろっ」

 横から止めに入った暮の(いさ)める声も、凪徒の一喝で消されてしまう。

「あたしはちゃんと……」

 モモは今一度弁解を試みたが、


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