*結ばれない手* ―夏―

[16]探索と告白

「おーやっと着いた着いた」

 暮は降車し、一つ伸びをした。

「さて~凪徒とモモは……? もう先に行っちまったか」

 眉毛の高さに手をかざし辺りを見回したが、あの背高(せいたか)ノッポと茶色い髪のコンビは見つからなかった。

「大丈夫です、暮さん。僕、凪徒さんの財布に発信器仕掛けておいたんで」

 と、平然と凄いことを言ってのけた秀成が自分のスマホを(のぞ)き込み、リンと暮を連れて歩き出す。

「おい……何でお前が凪徒の財布にそんなもん付けてるんだよ」

 暮は恐る恐る問い(ただ)した。

 春の誘拐事件でハッキングまでした秀成のオタク振りは、凪徒から聞かされている。

 暮もそんな秀成を敵には回したくないな、とは思っていたのだが、既に凪徒自身がそんなことになっているということは、敵と見なされてしまっているのか?

「んー、あんまり意図があってやったことではなくて、()くまでも興味本位と言いますか。ちょうどいいモルモットが目の前に落ちていたと言いますか……」

 ──あいつの財布はこいつのモルモットなのか!?

 秀成の視覚範囲に私物を放置するのはやめよう── 一つ学んだ暮は、心に()めるように胸に手を当てコソっと息を吐いた。



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