素敵な天使のいる夜にー4th storyー


「絢翔が悪いわけではないんだ。

沙奈が今日、1日を乗り切れた。

沙奈が、笑っている姿を見て心から嬉しかった。

それと同時に、他の男がその笑顔を近くで見ているって思ったら…少しだけ、嫉妬心が芽生えてしまったんだ…」

この先の言葉を続けるのが、少しだけ怖かった。

医者としてじゃない。

恋人として、1人の男としてそんな自分を見せるのは初めてだから…

「病院にいた時の沙奈の世界は、俺や紫苑達と病室だけだった。

それは決して良いことじゃない。

だから、沙奈が無事に大学へ戻れて、友達とまた笑い合える場所が増えて、本当に嬉しい…

でも…

沙奈の世界が広がれば広がるほど、俺だけじゃなくなっていく気がして、少しだけ怖くなってしまったんだ。」


こんなこと、言うつもりじゃなかった。

俺らしくない。

子供みたいだ。

「ごめん…。困らせるつもりじゃ…」

沙奈はしばらく黙り込んでから、小さく笑った。

「…大翔。」

「ん?」

「手…繋いでもいい?」

予想もしなかった沙奈の言葉に、心臓の鼓動が加速する。

「いいよ。」

沙奈の少し冷たい手が、俺には優しい温もりに感じた。

その温もりだけで、不思議とさっきまであった胸のざわつきが落ち着いていく。

「大翔、私ね…」

「うん。」

「今日1日で、1番安心したのは…

大翔が、迎えに来てくれた時だった…

大学へ戻ってから今日1日改めて思ったの…

私は、大翔がいたからまたこうしてここに帰って来れた。

あの時、大翔が無理をしていた私を止めてくれて守ってくれたから…

毎日、私の気持ちと真剣に向き合ってくれたから…

たとえ、大学に戻ってこの先色んな世界が広がったとしても…

大翔は…私の帰る場所だから…」

その言葉に、息が止まりそうになる。

帰る場所。

医者としても。

恋人としても。

それ以上に嬉しい言葉はなかった。

「……反則だな。」

思わず笑う。

「え?」

「そんなこと言われたら。」

沙奈の手をゆっくり握り返す。

「もう一生、離せなくなる。」

沙奈は少し照れながら笑う。

「離れませんよ。」

その笑顔を見た瞬間。

教室で感じていたざわつきが、嘘みたいに消えていった。
< 40 / 40 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

すてきな天使のいる夜に

総文字数/94,176

恋愛(純愛)70ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ーSide 沙奈ー 神様はいつでも意地悪で 私に幸せをもたらせてくれなかった その告知だって突然で なんの前触れもなく 音を立てるように 静かに、でも確実に 暗闇へと引き連れていった だけど あなたと出逢えたことで 私の人生は 光輝くものへとキラキラ眩しい世界へ 導いてくれたんだね
すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜

総文字数/62,451

恋愛(純愛)48ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
人と人との繋がりは とても尊くて 私に繋がれたこの糸は 決して切れることのないように あの日、あの夜に 2人がしっかりと 結んでくれたんだね。
金木犀

総文字数/59,784

恋愛(純愛)47ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
『誰かの温もりに触れること。』 私には程遠い物だと思っていた。 むしろ、関係の無いもので。 無関係の物だと。 騙し、騙され 期待し、裏切られ 誰かに触れられる度、音を立て心が崩れ落ちていく。 それでも、いつの日か 私にも分かる日が来るのだろうか。 「どんな道を選んでも、お前の人生を俺が引き受けるよ。」 優しい陽だまりのようにそう笑った彼に きつく縛られた心の中の鎖が、闇が。 明るく照らされ、解かれ、 前を向いて生きる覚悟ができたんだよ。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop