美雪
 次の日の夜もまた、あたしの中の雪女の「私」は目覚めた。
 
 人通りのない路地に軽そうな男を誘い込んで、抱きしめられたときに男の腹にナイフを突き刺した。

 生ぬるい血の温度が気持ち悪い。

 今度は雪女らしく冷気で獲物を殺そうと思い、男の内臓を引きずり出して、体の熱を奪ってやった。

 男の返り血で、真っ白な着物に真紅の花びらが散った。
 
 私は殺した男の精気で毎晩力をつけて、人間離れしていった。


 一週間後、冷気を操れるようになった。
 思い込みではなく、自分が雪女になったという、確信を得た瞬間だ。

 寂れた公園で男二人組を見つけたときだ。
「なっ、なんだお前こんな真冬にそんな格好で寒くないのかよ?」
 一人の男が私に聞いてきた。

「君みたいな可愛い子が夜中にこんな薄着じゃ危ないし風邪引くよ。」
 と言って私にマフラーをかけてきたが、すぐにそれを地面に叩きつけた。

 私は冷たくなればなるほど力を増していく。
 防寒なんて無意味だ。
 マフラーを巻いた雪女なんて聞いたことがない。

 足元で男のマフラーが、みぞれでどんどん濡れていく。

「涼しいのが好きなの。気にしないで。」
 私は微笑んで男たちに言った。

 だがマフラーを汚された男は黙ってはいなかった。
「君、俺のマフラーこんなにぐしゃぐしゃにして、どうしてくれるのかなー?」
 
 男は掴みかかってきて、息ができなくなった。
 苦しい。
 もう一人の男が腕を押さえていて何もできない。

 頬を殴られた。口の中が切れて、血が出た。

 やられる。

 諦めかけたとき、雪が降っているのに気づいた。

 そうだ、私は雪女。

 雪や氷や冷気なら何でも操れるはず・・・



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