断罪された真の聖女の愛情たっぷり癒しご飯


「司教は聖力を失ったことに後悔はないと言っていましたよ。陛下が悔やまれてはそれこそ司教の面目が立ちません」
「……それもそうか。人を助け導くのが彼の務めだものな」
 ウィリアムは自分の抱いている感情がヘイリーの矜持を傷つけることになると気づくと考えを改める。
 息を吐いたウィリアムは気を取り直して本題に入った。

「この間言っていた人物、メアリー・ブランドンの身元が判明した。彼女は王都から南の商業都市で栄えている商家の娘だ。彼女が四歳の頃に母親のジェシーは病死している。メアリーの方は一年前から行方不明になっているようだ」
 隠密の調査によるとメアリーは長女であり、正式なブランドン家の子供であったが、後妻と異母妹に虐められていたという。父親はメアリーには無関心で助けようともしなかった。それもあってメアリーは常に周りの目を気にして怯えながら生活していた。

「他に彼女について何か分かりましたか? 行方不明になる前は?」
「行方不明になる前、メアリーは頻繁に男と会っていた。男と会う度にメアリーは浮かれていてとても幸せそうだった、と目撃した住人が漏らしていた。ただ、その男は聖騎士だったという情報が上がっている」
 クロウはぴくりと片眉を跳ね上げた。
(聖騎士? ということは教会側とメアリーの失踪には何か関係があるのか?)
 ウィリアムの話を聞いて逡巡していたクロウだったが突然顔を上げた。

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