あなたとわたしで紡ぐ愛


「……あの日からずっと、一緒にいてくれてありがとう。私を1人にしないでくれて、ありがとう。でも、」

「翠……?」

「私はあの頃から比べて十分大人になりました。もう、1人でも大丈夫です」

「……翠」

「だから渓くん。これからは私のことなんて気にせずに、自分の幸せのことだけを考えて下さい」

「……おい、」

「お兄ちゃんとの約束になんて、もう縛られないで下さい。私は大丈夫ですから。だから、お兄ちゃんの分まで佐和さんと、どうかお幸せに……!今日はごちそうさまでしたっ!先に帰りますっ!」

「……っ、おいっ……!」



一気にまくし立てて、笑顔を貼り付けるのが精いっぱいだった。


もうそれ以上、そこにはいられなかった。


だってちゃんと笑って手を離すって決めたのに、涙が溢れそうだったから。

涙なんて溢したら、全然大丈夫なんかじゃないって、渓くんにバレちゃうから。


だから私はそれが溢れてしまう前に、まだ笑顔でいられるうちに、渓くんの前から逃げ出した。



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