オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
その瞳は、やっぱり辛そうで、私は俯いた。

でも、ちゃんと、春樹に言わなきゃいけない。
それなのに、そう思えば思うほどに、うまく言葉が出てこない。

先に重い口を開いたのは、春樹の方だった。

「……明香……ごめんな。……明香に俺、嘘ついた。……自分のためだけに。……明香があんなに親を求めていたのを知ってたのに……ごめんな……最低なことした」

春樹は、苦しそうに泣きそうな顔で、睫毛を下に向けて、頭を下げた。

「違うっ……春樹だけが、悪くないの……私が……ずっと春樹に甘えてたから。……冬馬への想いが叶わなくて、苦しくて、こんな……弱くてズルい私を、いつも春樹が愛してくれて、春樹が側に居てくれることが当たり前で、心地よかったの……最低なのは……私だよ……」

春樹が、(こぼ)れた涙をいつものように掬う。

何度こうやって、春樹は私の涙を(すく)ってくれたんだろう。

いつも抱きしめて、大丈夫だよって、慈しむように大切にしてくれた。

私が、冬馬と兄妹として、身体を重ねた時も知らないフリをして、変わらず愛してくれた。

「……ごめんなさい……」

ーーーー私は、最後までズルい。泣いたら春樹は、私のことをちゃんと責めれない。それなのに、春樹の顔をみたら、涙は勝手に転がって止まらない。

「…ひっく……春樹……私……春樹とは」

「明香っ」

言葉を遮るように、春樹に強く抱き寄せられる。

煙草の混ざる冬馬とは違う、優しくて、いつも私を安心させてくれる、春樹の匂いと温もりと共に、言わなきゃいけない言葉は止まってしまう。息ができないほどに強く抱きしめられて。


「それ以上言わないでくれよ……頼むから……俺の側にいて」
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