オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「悪い、待たせたな」
春樹に促されて、冬馬の隣の席の女性の前に私は座った。
「いや、別に」
冬馬は、私を見ようともせずに、隣の女性に話しかけた。
「妹の明香。春樹の婚約者だよ」
妹という言葉に、心が重たくなりそうだ。
「初めまして、神谷芽衣です。大学4回生で冬馬さんとお付き合いさせて頂いています」
「あ、まだ学生さんなんだ」
春樹の言葉に、芽衣が頷いた。
少し垂れ目な綺麗な二重瞼で、気品もあって、とても可愛らしい顔立ちをしていた。
「……あ、妹の平山明香です。兄がお世話になっております」
兄という言葉を吐き出した自分が苦しくなってくる。冬馬の隣には、妹の私は、婚約者としてなど、一生並ぶことはないのだから。
「おい、芽衣。何が冬馬さんだ。春樹達の前だと、えらく、しおらしいな」
「いいじゃん、私だってちゃんと挨拶できるってとこを冬馬に見せたかったの。いっつも、ガキって馬鹿にするから」
タバコを、咥えた冬馬のタバコを芽衣が取り上げる。
「禁煙してってこの間言ったよね!隣からタバコの煙きたら速攻でピンポン鳴らすから!」
「うるせぇよ、俺の勝手だろ」
二人の会話の雰囲気が、ついこの間までの自分と冬馬に重なる。
「隣?同じとこに住むのか?」
春樹が、全員分の注文を、済ませて、驚いた顔をしながら、割って入ってきた。
「コイツ、今日から家出してんだよ」
「あ!またコイツって言った」
芽衣が冬馬に口を尖らせた。
「え?家出?」
「あー、冬馬内緒にしてって言ったのに!」
「……まぁ、ちょっと色々あって……芽衣が借りてる部屋がまあまあ広いし、会社からも近いからさ、しばらく芽衣の隣の部屋に住む」
冬馬は、涼しい顔でそう口にした。
こんな可愛い人と、冬馬は隣同士の部屋に住むんだ。
隣だったらいつでも会える。
そして結婚したら、一緒に暮らして、この女を心から愛して、私のことなんか忘れてしまうのだろうか。
この女のことを冬馬はどんな風に抱くのだろうか。
「そうか……心配してたけど、お前らの雰囲気みてたら少し安心した。な、明香?」
ふいに、そう春樹から振られた私は、うん、と頷くのが精一杯だった。
「どこがだよ……ガキで参ってるよ」
運ばれてきた、私と同じクリームパスタを頬張りながら、芽衣が頬を膨らませた。
「拗ねんな」
私は、クリームパスタの味がほとんどしなかった。
冬馬と並んで話す芽衣が、羨ましくて仕方なかった。自分の居場所を取られた、そんな気になった。
「明香、大丈夫か?」
「え?」
冬馬が私の目をじっと見ていた。
「顔色悪いな、もう帰れ。午後の仕事は休んで春樹に送ってもらえ」
「だ、大丈夫」
そんなことよりも、一刻も早くこの店を後にしたかった。二人を見てると、心が苦しくて。
「俺も気になってたんだ、役員会あるから、明香送ってから、一度会社戻るよ」
「ほんと、大丈夫。ちょっとお手洗い行ってくるね」
立ち上がって、冬馬の横を通り過ぎようとした時だった。
視界が急に狭くなって、目の前が真っ暗になる。身体が傾くのが分かって、意識が遠のいていく。
「明香!」
崩れかけた私を、抱き止めたのは、冬馬だと思う。
意識を失う瞬間、少しだけ、タバコの混ざった冬馬の匂いがしたから。
春樹に促されて、冬馬の隣の席の女性の前に私は座った。
「いや、別に」
冬馬は、私を見ようともせずに、隣の女性に話しかけた。
「妹の明香。春樹の婚約者だよ」
妹という言葉に、心が重たくなりそうだ。
「初めまして、神谷芽衣です。大学4回生で冬馬さんとお付き合いさせて頂いています」
「あ、まだ学生さんなんだ」
春樹の言葉に、芽衣が頷いた。
少し垂れ目な綺麗な二重瞼で、気品もあって、とても可愛らしい顔立ちをしていた。
「……あ、妹の平山明香です。兄がお世話になっております」
兄という言葉を吐き出した自分が苦しくなってくる。冬馬の隣には、妹の私は、婚約者としてなど、一生並ぶことはないのだから。
「おい、芽衣。何が冬馬さんだ。春樹達の前だと、えらく、しおらしいな」
「いいじゃん、私だってちゃんと挨拶できるってとこを冬馬に見せたかったの。いっつも、ガキって馬鹿にするから」
タバコを、咥えた冬馬のタバコを芽衣が取り上げる。
「禁煙してってこの間言ったよね!隣からタバコの煙きたら速攻でピンポン鳴らすから!」
「うるせぇよ、俺の勝手だろ」
二人の会話の雰囲気が、ついこの間までの自分と冬馬に重なる。
「隣?同じとこに住むのか?」
春樹が、全員分の注文を、済ませて、驚いた顔をしながら、割って入ってきた。
「コイツ、今日から家出してんだよ」
「あ!またコイツって言った」
芽衣が冬馬に口を尖らせた。
「え?家出?」
「あー、冬馬内緒にしてって言ったのに!」
「……まぁ、ちょっと色々あって……芽衣が借りてる部屋がまあまあ広いし、会社からも近いからさ、しばらく芽衣の隣の部屋に住む」
冬馬は、涼しい顔でそう口にした。
こんな可愛い人と、冬馬は隣同士の部屋に住むんだ。
隣だったらいつでも会える。
そして結婚したら、一緒に暮らして、この女を心から愛して、私のことなんか忘れてしまうのだろうか。
この女のことを冬馬はどんな風に抱くのだろうか。
「そうか……心配してたけど、お前らの雰囲気みてたら少し安心した。な、明香?」
ふいに、そう春樹から振られた私は、うん、と頷くのが精一杯だった。
「どこがだよ……ガキで参ってるよ」
運ばれてきた、私と同じクリームパスタを頬張りながら、芽衣が頬を膨らませた。
「拗ねんな」
私は、クリームパスタの味がほとんどしなかった。
冬馬と並んで話す芽衣が、羨ましくて仕方なかった。自分の居場所を取られた、そんな気になった。
「明香、大丈夫か?」
「え?」
冬馬が私の目をじっと見ていた。
「顔色悪いな、もう帰れ。午後の仕事は休んで春樹に送ってもらえ」
「だ、大丈夫」
そんなことよりも、一刻も早くこの店を後にしたかった。二人を見てると、心が苦しくて。
「俺も気になってたんだ、役員会あるから、明香送ってから、一度会社戻るよ」
「ほんと、大丈夫。ちょっとお手洗い行ってくるね」
立ち上がって、冬馬の横を通り過ぎようとした時だった。
視界が急に狭くなって、目の前が真っ暗になる。身体が傾くのが分かって、意識が遠のいていく。
「明香!」
崩れかけた私を、抱き止めたのは、冬馬だと思う。
意識を失う瞬間、少しだけ、タバコの混ざった冬馬の匂いがしたから。