オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
何処(どこ)をどう歩いたかわからないうちに、いつの間にか(うち)に辿り着いていた。

芽衣の待つ俺の家に。扉を開けると、芽衣がすぐに駆け寄ってきた。

「冬馬おかえりー。もう、連絡してって言っ……」

芽衣の言葉を遮るように、俺は、芽衣を抱きしめた。

「冬馬?冷たいよ……何かあったの?」

芽衣の両手が、俺を包むようにして、背中を摩った。

「俺さ……」

そこまでしか言葉が続かない。春樹に絶縁されて、明香を妹としても失った俺は、どうしたらいい?

「冬馬?具合でも悪いの?」

芽衣が、俺から身体を離すと頬に触れて、目を見開いた。

「冬馬っ!怪我したの?ちょっと、まってて、私の家から、救急箱取ってくる」

俺は、駆け出そうとする、芽衣の手首を掴んだ。

「行くな、……頼むから」

「冬馬……?」

「……マジで、……どうにかなりそう」

芽衣が、心配そうな顔で俺を覗き込むと、小さな身体で、ぎゅっと俺の身体を包みこんだ。

「私……何処(どこ)もいかない……冬馬の側にいる」

「……俺なんかの…側にいたらさ、誰も幸せになんかなれないのにさ……ごめんな……」

でも俺は、誰かのぬくもりがないと、もう孤独に耐えきれそうもなかった。

芽衣が、俺を見上げると、真っ直ぐに俺の瞳を見つめた。


「……ねぇ、冬馬、抱いてよ……」  

芽衣の瞳は、真剣だった。

「芽衣?何言って……」

「本気じゃなくて……いいから。私のこと……ちゃんと、知ってほしいから」

躊躇(ため)ってる俺に、芽衣の唇が、ゆっくり重ねられた。重なりあった唇からは、芽衣の涙の味がする。

「……冬馬、好きだよ」

あの夜の明香の言葉と重なる。芽衣は明香じゃないのに。

「芽衣」

芽衣の肩を掴んで、身体を離した、俺を見上げると芽衣は、俺の首に手を回した。

「冬馬がいいの……」

そのまま、芽衣の唇が、俺の唇に重ねられる。

全身氷のように冷え切ってる体は、芽衣の唇から、僅かに少しずつ、体温が伝染してくる。

人肌を求めるように、キスを重ねながら、俺は、明かりをつけずに、寝室のベッドに芽衣を組み伏せた。

窓から差し込んだ月明かりが、俺達を仄かに照らす。芽衣は暫く、黙って俺の瞳を、見つめていた。

「……冬馬……明香さんが……好き?」

「…え?…………」

揺れた俺の視線を、捕まえるように、芽衣は、俺の瞳から、目を離さない。

「……ごめんね、この間、明香さん達が、引っ越し祝いに来た時、私寝ちゃってたんだけど、お皿が割れた音で、起きちゃって……見ちゃったから。……ごめんなさい」

芽衣は、睫毛を、下に向けた。
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