13歩よりも近い距離
 ぽろんと涙が出て行った。手の甲にかかるその雫は、拭えど拭えど止めどなく。岳は濡れた私の頬に、手を添えた。

「可哀想だから付き合ってあげる。そんなかたちで、すずを手に入れたくなかったんだ」

 柔和な表情だった。

「最期に俺の望みを叶えてあげようとか、そんな気持ちですずと付き合えても嬉しくない。俺は、すずの愛が欲しかっただけだから」

 ふっと岳は微笑んで、こう続ける。

「まあでも、最期の最期まですずを振り向かせることはできなかったけどね」

 その瞬間、後悔の波が私を襲った。

「違うの、岳……」

 頬にある岳の手に、自分の手を被せた。

「私も、岳のことが好きなの……」

 私のその言葉に、岳は「え」と眉を寄せる。

「でも怖かったの……岳ともし別れちゃった時に、終わっちゃった時に、気不味くなっちゃうのが怖かった……だからずっとこのままがいいって思ってたっ。岳とは一生、仲良くいたかったから……」

 だけど。

「岳と逢えなくなって、ものすごく辛かったっ。逢いたいって思った、また一緒にフラワーパーク行ったりゲームしたりしたいって思ったっ。キスだってまたしたいって思ったっ。それなのに、それなのに……」

 岳お願い。嘘だよって、そう言ってね。

「もうすぐ死んじゃうの……?」

 頬にある岳の手は、こんなにも温かいのに。

「もう、治らないの……?」
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