あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
***

 大葉(たいよう)が経理課・庶務課のある四階フロアに入ると、あちらこちらから「おはようございます」と言う声が掛かった。

 それに「ああ、おはよう」と何気なく返しながら、ハッとした大葉(たいよう)だ。

 考えてみれば今まで気付いていなかっただけで、こんな風に挨拶をしてくれた面々の中にはきっと羽理(うり)もいたんだろうな?と思うと、(つと)めて皆の顔を見て挨拶せねば……と身につまされる気持ちがして。

(俺、……ホントみんなと一線引くような接し方してたんだな)

 女性社員らから迫られることに辟易(へきえき)していたからと言って、多くの部下たちとの関わりをシャットアウトするようなことを、同一線上で考えてはいけないはずだったのに。

 羽理と風呂で初めて対面した時、羽理は大葉(たいよう)が自社の部長だとすぐ気が付いたのに、自分は目の前の女性が(おの)れの管轄する財務経理課の人間だと気付けなかったのは、つまりはそういうことだったんだろう。

 ふと見まわした先、羽理の席の隣に今朝電話で話した相手――法忍(ほうにん)仁子(じんこ)の姿を認めた大葉(たいよう)は、周りには分からない程度に彼女にだけアイコンタクトを取った。

 社長との用事を済ませたら、約束通り法忍(ほうにん)さんには羽理と話す機会を設けてやらねばと思いつつ。

(いや、その前に俺からもちゃんと羽理とのこと、話さねぇとな)

 何しろ勢いに任せてプロポーズのことも話してしまったのだ。
 そこは倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)には話していないところだ。
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