あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
***


 外から小型犬特有のけたたましい吠え声が聞こえてきて、「何ごとかしらね?」と窓の外を見た果恵(かえ)が、「ここからじゃよく見えないわね」と小首を(かし)げた。
 それを聞いた羽理(うり)は、『あの声はきっとキュウリちゃんだ』と思って。大葉(たいよう)と顔を合わせるのが何だか気まずくて、どうにかしてこの場を立ち去りたいとソワソワしたのだけれど、逃げ出すより先に柚子(ゆず)にギュッと手を握られた。

「きっとたいちゃんが来たのよ。羽理ちゃん、逃げたい気持ちも分かるけど……ちゃんと話さなきゃダメ」

 手を掴まれたまま柚子からそんなことを言われた羽理は、助けを求めるみたいに果恵を見つめた。でも、期待とは裏腹。果恵からも「大丈夫よ。私たちがついてるから! ちゃんと大葉(たいよう)と向き合いましょう?」と言われて、空いていたもう一方の手を取られてしまう。

 そうしてそのまま二人に挟まれて、半ば連行されるみたいに玄関外へと連れ出された羽理は、数奇屋門(すきやもん)のところに、大葉(たいよう)らしき人影が背中を向けて(たたず)んでいるのを見た。

 西の空へ傾いた夕陽を受け、こちらからは逆光になっていてシルエットしか見えないけれど、その周りをダックス(キュウリちゃん)(おぼ)しき犬の影がクルクル回りながら吠えているから間違いないだろう。

 いつもはおとなしく大葉(たいよう)をじっと見上げるのが常のキュウリちゃんが、騒がしく吠えているのは何故だろう?
 それも気になって。

「たい、……よう」

 会いたくないと思っていたくせに大葉(たいよう)の姿を見たら、ほとんど無意識。
 気がつけば、羽理は柚子と果恵の手をすり抜けるように離れて、大葉(たいよう)の方へ歩き出していた。
< 368 / 539 >

この作品をシェア

pagetop