あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 大葉(たいよう)岳斗(がくと)から、『荒木(あらき)さんの家のすぐ近所にある居間猫(いまねこ)神社で杏子(あんず)ちゃんと出会いました』と聞かされたのだが、羽理(うり)にはそれが言えなかった。

『実は……余り言いたくないんですけど、杏子ちゃんの住んでるところ、荒木さんの家の物凄い近くなんです。それこそ《《偶然鉢合わせても不思議じゃない》》くらいの場所なんで……僕としては出来れば荒木さんを大葉(たいよう)さんの家に引っ越しさせちゃって欲しいんですよね。正直な話、たまたまとはいえ杏子ちゃんと大葉(たいよう)さんが出会っちゃったりしたら……杏子ちゃん、心がかき乱されてしまうと思うんです。僕はこれ以上大葉(たいよう)さんには杏子ちゃんに干渉して欲しくないですし、実際問題荒木さんだって大葉(たいよう)さんのお見合い相手が自分()のすぐ近くに住んでるって知ったらきっといい気はしないでしょう?』

 電話の切り際、岳斗から言われた言葉が頭の中をぐるぐる回って……それがどうしても歯切れの悪い言動に繋がってしまった。恋心にはめちゃくちゃ(うと)いくせに、変なことには鋭い羽理に不審がられていることにも気付けないまま、大葉(たいよう)はぼんやりと考える。

(杏子の家が居間猫神社の近くって……実際どの辺りなんだよ!)

 居間猫神社といえば、大葉(たいよう)と羽理を結び付けた猫神様(ねこかみさま)御座(おわ)します有り難ぁーい神社だ。
 場所的には羽理の住んでいるアパートから目と鼻の先。そこで杏子と出会ったとなると、本当に羽理の住まいと近いところに杏子は住んでいるんだろう。
 岳斗は杏子の家がどこなのかだけは大葉(たいよう)に明かしたくないみたいで、そこは最後までぼかし続けた。
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