あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
***

「わーい! 荒木(あらき)先輩(せんぱぁーい)、待ってましたよぅ!」

 営業課のドアをくぐったと同時、窓寄りの席に座った五代(ごだい) 懇乃介(こんのすけ)からにこやかに手を振られて、羽理(うり)は心の中であからさまに溜め息を()いた。

 羽理より二つ年下のワンコ系営業マンの懇乃介(こんのすけ)は、仕事中だと言うのにまるでアフターファイブのようにネクタイを緩めて、おまけに胸元のボタンまでひとつ外している。

 元々癖っ毛なのか、ゆるふわな髪の毛をクラウドマッシュに仕上げた懇乃介(こんのすけ)は、営業職としてはちょっと明る過ぎない?という印象のキャラメルブラウンの髪色で。

(入社してきたばかりの頃はもう少し黒っぽい毛色だったのに)

 羽理の勤める土恵(つちけい)商事では、新入社員は一ヶ月単位でいくつかの部署をランダムで回って研修をするシステムが採用されている。
 その中で各課の上司や先輩たちから上がってきた評価シートで、最終的にどこの配属になるかが決まるのだけれど。
 たまたま懇乃介(こんのすけ)が財務経理課へ研修に来た際、羽理が教育係として面倒を見たのをきっかけに、何故か未だにやたらと懐かれているのだ。

『俺は先輩の下で働きたかったのにぃー』

 もちろん配属先は本人の希望もある程度は考慮されるのだけれど。
< 90 / 539 >

この作品をシェア

pagetop