あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「そっか、そっか。そう言うことだったのかぁー。考えてみたら羽理(うり)がお弁当を作って来るなんて不自然だもんね!? そんな事情なら私も文句なしで納得だわ!」

「ごめんね、見栄張っちゃった」

 仁子(じんこ)の言葉に羽理が乗っかって。

 弁当箱が犬柄だったのにも、もっと言えば風呂敷包みが男っぽい渋柄だったのにも、得心が言った様子の仁子が、「弁当箱も包みもちゃんと洗って返しなよー?」と、まるでお母さんのようなことを言ってくる始末。

「分かってるって」

 羽理がムムッと口を突き出して答えるのを見つめながら。

 大葉(たいよう)は、自分がどこぞの女性(?)と同棲していることになっているのも気になったし、何より呼び名!
 呼び名が〝裸男〟で定着してしまっていることにも思いっきりモヤモヤしてしまう。

(俺ンところに泊まりましたって素直に言えねぇのは分かる。分かるが! もっと言い方があんだろーが!)

(それに……俺が同棲してる女って誰だよ! 話の感じからして荒木ってわけじゃなさそうだよな!? おい荒木! お前、二人にどんな説明をしたんだ!)

 倍相(ばいしょう)法忍(ほうにん)が出払ったのをいいことに、大葉(たいよう)はその辺の諸々の事情を聞くためと理由付けて、羽理(うり)を会社からちょっぴり離れた公園までタクシーで連れ出したのだけれど。

 木漏れ日のさす木陰に設置されたベンチへ横並びに腰掛けて、ふたりして大葉(たいよう)お手製の弁当を広げていたら、「んー! このハンバーグ、味が沁みてて絶品です!」とか何とか嬉し気に弁当のおかずを褒められまくって、なかなか本題に切り込めない。
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