深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
「俺、あの時に中田の気持ちを聞いていなかったよな? あとから、何で聞かなかったんだろうと後悔したんだよね」
「あの時の私の気持ち?」

「そう」と一瞬だけ目を伏せた成瀬は、私を真っ直ぐと見据えた。

そういえば、あの時もこんなふうに向き合っていて、成瀬は真剣な眼差しで私を見ていた。

あの日……高校近くにあったカフェで、告白された。

「遠距離恋愛をする自信がないから、ごめんなさいって、言ったよね?」
「うん、言ったね」
「断られたのがショックで、肝心なことを聞きそびれていた。中田も同じ気持ちだと思ったから、告白したんだよ。中田はあの頃、俺のことをどう思っていた?」

成瀬は私の返事を聞いて、『わかった』と先に帰って行った。あのあと、私が泣いたのを知らない。

好きな人を振ったことに、涙が止まらなかった。好きな人を傷付けてしまったのが、辛くて、悲しくて、苦しかった。

自分の意思で受け入れなかったのに……。

でも、十年以上経った今なら言える。

「ごめんね……あの頃、私も成瀬のことが好きだったの。ものすごく好きだったから、離れちゃったら、会いたい時に会えない時間が辛くなるように思えて……断ったんだ」
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