深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
嬉しくてと言われたら、文句など言えない。言うつもりもなかったが。

「相思相愛の二人をお祝いしたくて、白い薔薇を選んだの」

お母さんは優しい目で薔薇を見つめた。

「嬉しいです。お祝いしてもらえて……」

私は目に涙を浮かべ、言葉を詰まらせる。

恭也の想いも、お母さんの気持ちもありがたい……こんな二回も彼を振った酷い私に優しくしてくれるなんて……。

「さやか」

恭也が私に寄り添い、背中をさする。私は顔を両手で覆った。涙が止まらなくなったからだ。

「ありがとう、ございます……」

涙声になってしまったけど、ちゃんと耳に届いたようだ。

お母さんが私の肩に手を添えた。

「さやかさん、こちらこそありがとう。恭也の想いを受け止めてくれて、ありがとう」

感謝の気持ちを伝えたのに、逆にもっと感謝されてしまうなんて……。

今日、ここに来れて良かった。彼の家族に優しくしてもらえて、良かった。

彼との縁がまた繋がって、本当に良かった。

薔薇の優しい香りが胸の奥まで、染み込んできた。
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