深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
「あ、ごめんなさい。泣かせるつもりはないの」

典子さんはバッグから白いハンカチを出して、私に向けた。

私は受け取らず、首を横に振った。

この人は思うほど、冷たい人ではないようだ。どちらかといえば、優しい人だろう。

家のこと、会社のこと、恭也のこと、私のことも考えてくれている。

誰もが良い方向に行くように……。

恭也の今後を考えるならば、私はいないほうがいいのかな。

わからない。

「すみません、今すぐ答えを出せませんが、考えます」

ちゃんと考えよう。恭也にとって、どうすることが一番いいのか……。

彼には苦しんでほしくないから。

典子さんが帰ってから、窓まで行き、空を眺めた。

朝よりも雲が増えていて、もうすぐ太陽を消してしまいそうな空。

必要であるけれど、今はなくても問題ないと消される。

私は恭也に必要な人間ではない?

私がいなくても恭也は困ることなく、生きていける。

私がいることで彼を困らせている?

彼のためを思うなら、どうすることが正解なのだろうか。
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