フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
♢♢♢

「あー、暇」

宿題の時間はキッチリ決めてやるタイプの人間なもんで、後々に残って大慌て。なんてことにはなったことがない。

でも真面目ってわけでもないから、一日中勉強なんてやってらんない。

バイトだって、私が毎日出ると他の人が稼げなくなるし、特に夏休みは私のシフトは少ない。

陽子さんがくれたお古のパソコンでだらだらと動画を見ながら過ごす日々が続いていたそんなある日の夜、藤君からの唐突の着信で思わず背筋がシャキンと伸びた。

「も、もしもし」

「あ、相崎さん?今大丈夫?」

電話越しに聞く藤君の声は、なんだか凄く新鮮でちょっとドキドキした。

告白めいたことを言われてからずっと、藤君と話す時はどうしても肩に力が入ってしまってら前みたいには自然に話せなくなった。

それは藤君にも伝わったみたいで、前よりメッセージの数も教室で話しかけられる機会も減った気がする。

そして私はそれを、寂しいと感じちゃってる自分勝手女子。だからって、私から話しかける勇気は出なかった。

「夏休み楽しんでる?」

「ま、まぁそれなりに」

「そっか」

藤君の穏やかな声に、なぜだか安心してしまう。

「急なんだけど、明日って暇?」

「明日?うん、特に予定は」

「じゃあ、俺と遊んでくれない?」

「っ」

言葉に詰まった私に、電話の向こうから小さな笑い声が聞こえた。

「相崎さん、分かりやすい」

「あ、ご、ごめん」

自分の顔が熱いのが分かる。電話でよかったと心底思ってしまった。

「気は遣わなくていいから。嫌なら断って」

「嫌とか全然、そんな風には思わないよ!」

ただ、どう接したらいいのか分かんないだけだ。

「藤君こそ…嫌じゃないの?」

「なんで?」

「なんか最近…話してくれなくなったから」

最後の方は尻すぼみ。自分で言った後、言うんじゃなかったってちょっと後悔した。
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