フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
「可愛いね」

「は!?」

「あ、ごめん。つい」

「い、いや…」

めちゃくちゃ恥ずかしい。思わずスマホぶん投げそうになった右手を、左手で必死に止めた。

「言い方が可愛くてさ。自分の良い方に脳内で解釈しちゃった俺」

「あ、う…うん?」

言ってることはよく分かんないけど、電話越しに可愛いと言われるその破壊力たるや。

いや、面と向かっても相当恥ずかしいけど、電話って耳元じゃん?声しか情報ないじゃん?だから余計に、可愛いの四文字が脳内でリフレインしてる。

「俺は、こうやって急に電話しちゃうくらい、相崎さんに会いたいって思ってるから」

「っ」

そんな風に言われると、どう返したらいいのか分かんない。

「ハハッ、また困ってる」

「ぜ、絶対わざと意地悪してるでしょ!」

「全部ホントのことだけど?」

「もっ、もう!」

藤君はまた笑って、それから声のトーンをいつも通りに戻した。

「最近話しかけるのが減ったのは、相崎さんが困ってるように見えたから」

「あ…」

藤君の声は穏やかで、凄くドキドキするのに落ち着く。

「こっちの気持ちばっかり押しつけるのもどうなんだろうって」

「ご、ごめん…」

「なんで謝るの?」

「藤君に、変な気遣わせちゃってるから…」

イエスかノー、はっきり決められない私が悪い。

「あのさ、相崎さん。俺、相当ズルイよ?」

「え?」

「相崎さんに意識してほしくてワザとあんな言い方したし、でも絶対フラれるって分かってたから告白まではしなかったし」

藤君ってズルいの?もしかしてこれが、恋の駆け引きってやつなのかな。

「だから、相崎さんが自分を責めたりする必要全然ないからね?悪いのは俺だし」

「あ、あの」

「俺のことで悩んでもらえるのは大歓迎だけど」

結局私は、藤君の手のひらでコロコロ転がされちゃってるのかもしれない。

「もう相当振り回されてるよ、藤君に」

「それは、狙い通り」

嫌味のつもりで言ったのに、なぜか藤君の声は嬉しそうだった。
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