フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
「ねぇ、福間さん」

いつも通りどんぶり抱えてスープまで綺麗に飲み干す福間さんを見ながら、ふと聞きたくなった。

「福間さんって、彼女いたことありますか?」

「なんだよ、急に」

「なんとなく聞きたくなって」

「あるけど」

「好きだから付き合ってたんですよね?」

「じゃなきゃ付き合わねぇよ」

なに言ってんだこいつ、みたいな目で見られる。

「それって、どうやって分かったんですか?」

「は?」

「だって、可愛い人も優しい人も世の中にはたくさんいるじゃないですか。なのに、福間さんはその人達を選んだってことですよね?」

「サラッと複数形にしてんのはなんなんだよ」

あの日から、藤君のことが頭から離れない。

告白されたわけじゃない、もう二人では遊びに行けないって言っただけ。ただそれだけのことが、こんなにも胸に引っかかる。

魚の小骨、十本くらい喉に突き刺さってる感じ。

私は、藤君のことが嫌いじゃない。嫌いじゃないから、簡単に返事が出来なかった。

傷つけたくなくて、傷つきたくなくて。

恋愛フラグだのなんだの騒いでた過去の自分に、お前はバカだと言ってやりたい。




「…やっぱなんかあっただろ」

福間さんはカウンターから身を乗り出して、私に顔を近づける。

「ま、言いたくないなら聞かねぇけど」

「すみません、変な質問して」

「別にいいけど、俺それに答えらんねぇわ」

「え?」

「そんな理屈で考えたことねーもん」

福間さんは、サラッとそう口にした。

「好きなもんは好き、そんだけ」

「…」

えらい極論だな。

「なんで好きか、どこが好きか、考えたことねぇ」

「はぁ」

「いや、俺こいつのこと好きだなーとか思う瞬間っつーの?そういうのはあるけどさ。あんま深く考えたことねぇよ」

福間さん、なんとなく本能のままに生きてそうだもんね。

だけどそっか。「好き」の感覚は、人によって違うんだ。
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