原田くんの赤信号
 同じクラスに好きな人がいるって楽しいな。毎日学校に行くのがワクワクしちゃう。

「福井くん、会いたいなあ……」

 福井くんと全然会えなくなった夏休み。勉強嫌いなわたしが『夏休みなんていらない』とまで思ったのだから、これは本気だ。本物の恋だ。

 背の高い福井くんはバレー部に勧誘されて、入部していた。だからわたしは、女子バレー部の友だちに夏休みのスケジュールを聞き、「ひとりじゃ恥ずかしいから美希ちゃんも来て」と、強引に美希ちゃんにもついてきてもらい、よく体育館にも足を運んだ。

「もう一本お願いしまあす!」
「おう!」

 他のどの新入部員よりもコートに立つ回数が多い福井くんは、先輩にも負けず劣らずの身長とジャンプ力。
 広い体育館、福井くんを探さなくとも、目立つ彼はすぐに発見できた。

「かっこいいねえ、美希ちゃん……」

 しみじみと自分の気持ちを漏らせば、美希ちゃんが肘で小突いてきた。

「瑠美……あんたマジで福井斗真に恋しちゃってんじゃん。目がハートになってるよ」
「シッ!だめだよ誰にも言っちゃ」
「言わないよ」

 こそこそ物陰に身を隠し福井くんを見つめては、「好き」を伝えたくなるけれど、その勇気はわたしにはなかった。
 告白して断られるのが怖い。
 気まずくなってしまうのも怖い。
 だったら今の関係のまま、こうして眺めているだけでもじゅうぶん幸せでしょと、自分にずっと言い聞かせていた。

 けれど。

「福井!いいブロックだ!」
「ありがとうございまあす!」

 カッコいいだけでは言い表せない福井くんの全てを見ていると、いつか言いたいなってそう思う。
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