原田くんの赤信号
原田くんの天気予報
 一月二十七日、水曜日。
 空一面青が広がる快晴の朝に、傘を携帯し登校する生徒など、ほぼゼロに近かった。

 降り出した雨にみんなが足早で帰る中、ただのスコールじゃないかと二の足を踏んだわたしの前に立ちはだかるは、一歩でも歩めば全身ずぶ濡れになりそうな滝の雨。

 真っ黒な空の下、試しに手を出してみれば、手洗いだってできそうだ。
 高校最寄り駅まで走る勇気も生まれない。

 もぉっと吐く白い溜め息。わたしは正面玄関の軒下で、ひざを抱えた。


「待ってれば?」

 それから数分後。
 すぐ真上でした聞き覚えのある声に、わたしは頭だけを上げる。

「原田くん」
「雨やむの、待ってれば?」
「原田くんも帰り損ねたの?」
「ううん。雨やむの待とうと思って。傘忘れたし」
「今日の大雨は天気予報士ですら予想外だから、傘持ってこれた人の方がすごいよ」
「まあ、そうだな」

 原田くんはそう言うと、わたしの隣で腰を下ろす。
 激しい雨音を、ふたり会話もなく耳にしていた。
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