原田くんの赤信号
 祝日の、成人の日を終えた次の日。
 一月十二日、火曜日。
 勇んで福井くんの元へと向かう美希ちゃんに、心の中でエールを送った。しかし、戻ってきた時の彼女は暗かった。

「ダ、ダメでした……」
「え!なんで!」
「住所なんか、教えられないって……」

 福井くんは、美希ちゃんを犯罪者とでも思っているのだろうか。住処(すみか)を教えれば、空き巣に入る泥棒とでも。

 悶々としているわたしの前、彼女は続けた。

「なんかね、男友だちみんなで賭け事してるらしいよー?」
「賭け事?」
「最初に福井斗真の家を誰かに教えた人が、コンビニのチキンをみんなに奢るって」
「はあ?」
「もちろん、福井斗真本人も含め」

 なんなんだ、そのピンポイントでしかない賭け事は。こんなゲーム、誰が発案したのだと考えずとも、犯人はひとりしかいないじゃないか。

 暗雲が、心の中で渦を巻く。

 ねえ原田くん。どうしてあなたはそこまでして、わたしのバレンタインデーを邪魔するの。
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